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戻 第37回

《xxxHOLiC・戻》第37回
  ヤングマガジン:2014年31号:2014.06.30.月.発売
 
「ここは」「おれの店じゃないから」
君尋は,気落ちしたような面持ちを見せた。
「なら この店は…」「誰の店なのかしら」
問いかける侑子。
「…侑子さんの だと思っていました さっきまでは」
侑子の目が,わずかに大きくなった。
「…おれには 願いを叶えて欲しい客がいて ということは,今 おれは店主代理で…」「でも,『外』と繋がっている客は中に入れない」「けど」「…侑子さんの店でもない」
「だとしたら」「ここは 『誰の店でもない』」
「いや」「『店』が存在しない次元,に いるんですね おれ」「『彼』の願いを叶える為に」
「…『あの子』 ね」
伏し目がちにつぶやく侑子に,君尋は説明する。
「彼」から,旅先で困っていると連絡が来た。問題の解決のために必要なものがあると相談され,依頼を受けた。しかし,店主代理である世界にそれはなくて,それがある世界に行こうとしたが……。夢を渡ることも誰かを望みの次元に渡す手助けもできるようになっていたが,君尋自身が次元を渡るのは初めてで,危ないとみんなに反対された。だから,夢で,遙に相談した。
遙は語った。違う次元,世界に行くにしても,「夢」を通っていかないと君尋には難しいし,何度もできることではないだろう。そして,必要なものが集まるまで,「夢」からさめてしまわないように,「世界」から戻ってしまわないように,自身の気持ちが揺らがないようにしなければならない。
「そう聞いて おれは」「…おれは 次元を渡る前に記憶を『隠し』た」
「俺が選んだ 一番,自分が 不安にならない時を」「おれが,まだ学生でバイトだった頃を 違和感なく過ごせるように」
ひとりでこの世界に来るつもりだったが,静やひまわりは,意識だけ「一緒」にここに来た。それは,別の世界で迷子にならないように,何かあったら「彼」に知らせられるように。話しいるその顔がわずかにゆがむが,目を閉じて,続ける。
「モコナがいないのは」「モコナがいたら 『外』と連絡が自由にとれてしまって」「せっかく隠した店の記憶や違和感に すぐ気付いてしまう可能性があったから おれが置いてきた」「すごく心配してくれてたけど」
目を開くと,気がとがめたような顔をした。
「そうして」「おれは この世界で過ごしていた」「おれが一番… 幸せだった時」「まだ自分が本当はナニモノなのかも 分からなくて」
「何より…」「侑子さん… 貴方が」「貴方が…いてくれた頃を」
 
「こうやって思い出したということは…」「頼まれていたものは 揃ったんですね」
「…貴方が そう,感じるなら」「そうね」
視線を落として侑子はそう言った。君尋は,目を閉じ,そして開く。
「…『彼』が言っていました」「様々な次元を渡って かつて会ったひとと同じ姿形をしているひとに また出逢うことがあるって」「似ているひと じゃない… 魂が同じひとが」
「貴方は 別の次元の侑子さん なんですか」
答えは,ない。
「違い, ますね」「店で願いを叶えて 少しだけ力が強くなったから 分かります」
「もし,貴方が他の次元にいるなら」「『此処にいて欲しい』と願っただけで貴方をそのまま止まった刻(トキ)に留める程の 力のあるひとが」「探し出さない筈がない」
そう,あの,クロウが……。
「貴方は おれが創り出した存在(もの)…ですか」