《xxxHOLiC・戻》第36回
ヤングマガジン:2014年29号:2014.06.16.月.発売
「…そうね」
刺すような目つきで答える侑子に,君尋は,たたみかける。
「おれに,どこへ戻れと言ってたんですか」「『だって貴方は』の先は…」
「本当に聞きたいの?」
互いに見つめあって……,君尋の表情が,陰った。
「…怒って ますか」
「いいえ」
「でも」「試してますか おれを」
侑子は告げる。そう思うなら,答えは自身で探さなければ。考えないようにしているその先を。
とまどいを顔に浮かべた君尋だったが,目を閉じて記憶をたぐった。
店の電話,持っていなかったはずの携帯電話。問いかけはいつも電話だった。
「でも あの部屋にあったのは テレビ」
電話とテレビの差を問う侑子に,電話は1対1,テレビはたくさんのひとが送り手になる,と答える。
そう,アレからは,何十ではきかない数の腕が突き出してうごめいていた……。さらに,考えを巡らす。
「たくさんのひと…」「『個』ではない」「『不特定多数』」
「その 貴方に繋がりを求める『不特定多数』を」「貴方は何と呼んでいたかしら」
君尋は,目を開き,息を吸うと,断じるように答えた。
「……『客』」
さらに,あのとき侑子が「あれは あたしの店には 決して近寄らないから」と言っていたと,指摘した。侑子の客なら店にはいれる……。と,なると,あの手が言っていた「戻って。だって貴方は」の先は……。
「『貴方は,願いを叶えてくれるんでしょう』」「…おれの客 だったんですね」
最後のことばは,苦い思いで,押し出した。
侑子は,願いをかなえてほしい客の念とでもいうものが,塊になり,戻ってきてとずっと呼びかけていたと,説き明かす。
「あのままでは 貴方を取り込んで」「無理にでも戻そうとしてしまっただろうから」
「だから,あの『外』と繋がるテレビのある場所にいかせて おれに憑いて来させたんですね」「おれを追って店に来ても この店には 入れないから」