《xxxHOLiC・籠》第187回
ヤングマガジン:2009年43号:2009.09.19.月.発売
「なんだ」と,静。
「‥‥昔は おまえって全然,表情変わんねぇし 何考えてるかちっとも分からんとか思ってたけど」
今でもどうだろう,と君尋
「モコナには分かる」「百目鬼は 今 物凄く」「酒が飲みたい!!」
「いや,その通りだ」
自画自賛のモコナと意気投合の静に,君尋がため息を漏らしていると,玄関から声。
「こんばんは」
マルとモロが,返事をして飛んでいく。
「2人が色々手伝ってくれて助かるよ」
そちらを見やったあと,君尋はモコナを見てひとこと。
「相変わらず茶々いれるばっかりのもいるけどな」
来客は小羽だった。背も伸びて,学校の制服姿で前に風呂敷包みをかかえている。
「小羽ちゃんならいつでも歓迎だよ 今日は何か?」
「おばあちゃんが これ君尋くんにって 牛肉のしぐれ煮」「モコナくんと静くんと一緒にどうぞって」
「おまえ,店に入り浸ってると思われてんぞ 来年大学卒業だっていういい大人がなぁ」
静にそれだけ言うと,君尋は視線を戻した。
「小羽ちゃんご飯は?」
「まだ でもおばあちゃん待ってるから」
「そっか じゃ お茶でも」
立ち上がる君尋に,ごちそうさまをすませた静とモコナが,酒とつまみを注文する。
「へいへい」「マル,モロ そいつらの茶碗片付けちまってくれるか」
風呂敷包みを持ち,手伝うという小羽と廊下を歩きながら,君尋は,あらためて彼女を見た。
「なぁに?」
「十字(つじ)学園中等部の制服 似合ってるなぁって」
前も言ったという小羽に,うれしくて何度でも言いたくなると君尋はほほえんだ。
「‥君尋くん」
君尋は,早く酒持っていかないとうるさいと言いつつ,歩きながら風呂敷をほどく。と,容器の下に封筒が……。
「手紙?」
小羽が心配そうに聞いた。それは,明日客が行くことを伝える占いのおばあさんからの手紙だったが,便せんを持っているその左手を,小羽は両手で包むようにはさんだ。
「大丈夫 最初の頃みたいなのはもうないし」君尋
「知ってる」「でも君尋くんが傷つくのは駄目」「心も,躯も」
「分かってる」
黙りこんだ相手に,君尋は笑顔で繰り返す。
「分かってるよ」「‥‥本当に」
小羽は,両手で君尋の片手をつかんだまま,うつむいていた。
縁側で月を見ながら君尋がキセルを吸っていると,やって来た風呂上がりの静が,すわりこみ,ひさげ〔提子〕から2人の杯に酒を注いだ。そして,客が来ることで小羽が心配していたと話す。
「頼りないかねぇ 新店主は」
「年は取らなくても怪我はする それに 店(ここ)に来られる医者が何時までいるか分からん」
「‥‥客もな」君尋が返した。
「だから 客が来るうちは会うよ」「それがおれに叶えられる願いなら叶える」
「そうやって待つって決めたから」
「侑子さんを」