《xxxHOLiC・籠》第188回
ヤングマガジン:2009年46号:2009.10.10.土.発売
ベッドにそうっと近づいていくマルとモロ。
支柱に巡らされたかやの中にはいると,たがいを見てうなずいた。次の瞬間……。
「わっ!」
いきなりかけぶとんがはねあがり,君尋の声がとどろく。ことばを失うマルとモロ。
びっくりしたと言う2人に,そっちこそと君尋。返り討ちにされても,君尋に抱きつき,はしゃぎまわる2人だった。
起こす前に起きてるのがめずらしいと言われて君尋が答える。
「今日は」「お客が来る日だから‥‥な」
居間,ちゃぶ台の前にすわった君尋に,お茶を飲み終えたモコナが,食事をすませて静が大学に行ったこと,買い物メモを渡すと追加は携帯にメールするよう言われたことを,伝えた。
変換とか面倒で携帯のメールが苦手だと,ぼやく君尋。
「モコナ得意だ!!」
1秒間に約1億回打てるとモコナは盛り上がる。
食事が終わり,片付けを頼まれたマルとモロが楽しそうに食器を運んでいく。それを見やってモコナが君尋に言った。
「百目鬼が今日も来るって」
「ああ? よっぽど暇なのか,あいつは」
「四月一日が傷ついてないか確認しにだろ」「心も 駆も」
「‥‥やっぱ暇なんじゃねぇか」
「ごめんください」
玄関の外からの声に,マルとモロがかけて行く。
来室を告げる2人の声に,テーブルで煙をくゆらせ待っていた君尋が立ち上がる。彼の前に立った着物姿の女性は,三味線用の長袋を右にかかえ,マルに左手を引かれ,目を閉じていた。
彼女は,手を差し出した君尋に謝意を述べ,モロの引いた椅子に腰をおろした。
「‥‥申し訳ありません 和室でお会いしたほうが良かったですね」
「いいえ 素敵なお部屋」「煙草 煙管かしら 良いにおい」「それに いい空気がちゃんと流れてる」「良いお部屋」
「噂に聞いたとおりのひとね」「御店主は」
お会いしたばかりでと君尋が言うと,まぶたを開き光のない目で見つめた。
「視えないとね 余計なものが入って来ないから余計にわかりやすくなるの」
「‥‥綺麗ですね 瞳(め)」「凄く」
「目,だけ?」
「勿論 他も全部」
「ちょっと遅かったわね」
ほほ笑みながら,長袋のひもを解く。
「今日 お邪魔したのは」「この子の事なの」
中身は,やはり三味線だった。