トップページデータノート「XXXHOLiC」ストーリー紹介(コミック版)

第186話

《xxxHOLiC・籠(ホリック・ロウ)》第186回
  ヤングマガジン:2009年42号:2009.09.14.月.発売
 
│ 世に不思議は多けれど

│ どれほど奇天烈/奇々怪々なデキゴトも

│ ヒトが居なければ/ヒトが視なければ/ヒトが関わらなければ

│ ただのゲンショウ/ただ過ぎていくだけの/コトガラ

│ 人/ひと/ヒト

│ ヒトこそ この世で/最も摩訶不思議な/イキモノ
 
両手に荷物をさげた人影を導くように飛ぶ黒いチョウ。それが門柱の上の飾りに止まる。
 
玄関のドアが勢いよく開き,外まで出てきてのお迎えはマルとモロ。
「いらっしゃいませっ」
「客じゃねぇんだがな」
前ボタンをはずしたスーツ姿の静が口を開いた。両手に手さげ袋,左にはビジネスバッグも持っている。
「じゃあ お帰りなさい」
言いつつ,右手の手さげ袋を奪うように取る2人。
「おれは,ここの家主じゃねぇぞ」
「でも,やっぱりお帰りなさい」笑顔の2人。
 
長椅子に,着物姿の君尋がけだるそうに横たわり,キセルを吸っていた。
背もたれの上のモコナが声をかける。
「よう」
「おう」静
「‥‥眠い‥」君尋
「もう5時だぞ」
「四月一日はさっき起きたばっかだ」と,モコナ。
客が来なければ何時間でも,と君尋。それでも,静の買い物の中身を確かめる。
「こういうの選ぶのだけはまあまあだな おまえ」
「おまえが五月蠅いからな」
「食うなら 性(しょう)の良いもんがいいだろうが」「夕飯(ゆうめし)は」
「食う」
君尋は,キセルの灰をタバコ盆に落とすと,マルとモロを連れて出て行った。
静の肩でモコナが言った。
「四月一日は相変わらずだった」
「‥‥そうか」
 
まるいちゃぶ台でモコナと一緒に食べはじめた静は,上を脱いでカッターシャツ姿。
エプロン姿で茶を入れている君尋が,いぶかって尋ねた。
「そういえば おまえ なんでそんな格好してんだ」
「学会だ」
「大学のか」
教授の発表で,映像資料を見せるのにノートパソコンを使っていたと説明する。
「しかし おまえが民俗学ねぇ」
「何回めだそれ」
「何回でも言うね」「おまえ 理系のほうが得意だっただろうが」
君尋はエプロンをはずした。
「4年前にも言っただろ 興味はあったって」「うちにはじいさんが残したものが色々あるからな」
君尋は,ふうんと言うように見返した。