人は生きたいと思わねばならない
また、死ぬことを知らなければならない
そしてなにより気付かねばならないことは・・・。
少年は暗闇の中ただ一人立っていた。
「お父さん お母さん 寂しいよ……」
そこに血に濡れた手が伸びてくる。
それは少年の父と母の手だった。
「おまえは行ってはならない…。待っている人がいるから…。」
そしてその手は少年から離れてゆく……。
「お父さん!お母さん!」
するとどこからか伸びた手が少年の腕をつかむ。
それは百目鬼の祖父、遥の若い頃の姿だった。
「よかった、間に合った。この姿でなければ気付いてもらうことができないからね。」
そして少年―四月一日君尋は目覚めた。
そこは侑子の寝室だった。
どこからともなく侑子が現れた。
侑子によると、窓格子ごと窓から落ちた。でも落ちたところに百目鬼が居合わせて救急車を呼ぼうとしたけれど侑子がミセに来させたのだという。
「黄泉に行くまでの道で引き止めてもらったしね」
「対価、高くつきますよね……」四月一日が意識の薄い中言う。
「それはもう3人に払ってもらったから」
そうして部屋に誰かが入ってきた。
それは紛れもない九軒ひまわりの姿だった。