「あの未来を、おれ達は選ばない。」
「わたし達が選ぶのは、」
「共に存在できる世界。」
「その為に、」
「「「「4人ひとりも欠けずに、ここから出る!!」」」」
二組の小狼と、さくら。声を通さぬ2つの部屋に分け隔てられても、4人の意志は1つに固まっていた。…壁を通して合わせた掌が、互いの心を通わせる。そして、この『見えない檻』からの脱出を試みる。
「馬鹿め!
魔力を持っているなら、そこから出られない事など分かっているだろう!」
飛王は、彼らの企てを知り、内部で次第に起こりつつある異状を察しながらも、己が手にした魔法具の絶対性を信じ、なお強がっていた。
だが、状況はさらに、彼の企図から外れていく。
1つの部屋に閉じ込められた、二人のさくら。彼は、彼女たちが持つ力、いや、彼女たちに与えた力を見くびっていた。
…二人のさくらが、互いに目配せをする。二人の白い掌を合わせ、己の内に秘められた力を解放する。
「まさか!!」
二人が纏う羽衣が、ふわりと舞う。同時に、シンメトリック(左右対称)に祈る二人の背中から、彼女達を蝕み続けた刻印が現れる。ただし、それが呈するのは、二人を悪しき欲望へ誘う黒色ではなく、彼女達と、二人の小狼の未来を映す白色。…その姿は、まるで自由に大空を羽ばたく、鳥たちの翼のようだった。
「わたし達の中にあるこの力は、時空を超える力。
…わたし達にだけ、使える力。」
「その力を使ってそこから出るつもりか!!」
…飛王はすさまじいまでの力を放ち始めた魔法具を前に、狼狽の色を隠せなかった。
「やめろ!
おまえ達の力は、そんな事の為に貯えさせたのではない!!」
叫ぶ飛王。その間隙をつき、黒鋼が剣撃を放つ。…その一撃は、気を奪われた飛王を捉え、痛烈なダメージを与える。そして、続くファイも、飛王へ雷撃を放つ。
連続する、攻撃。それでも、飛王の意識は防御や反撃ではなく、魔法具へと集中していた。
「そこから出た所で、既に理は壊れている!
おまえ達がそれを壊す事で、更に理は乱れる!
…元には戻れん!いや、更に時空は崩壊する!!
おまえ達の存在も無に帰すぞ!!」
なんとか、彼らを翻意したい飛王。だが、4人は全く耳を貸そうとしなかった。
「それでも前には進める!
止まる事より、おれは進む事を選ぶ!
…みんなを、信じてるから!!」
満身創痍の傷を負っても、魂を削るほどの死力を尽くしても。いま、彼らを突き動かすエナジーは、見えない未来でも後悔しないための行動(アクション)。…それが、『共に旅を続けてきた、仲間と共に生きる』ための戦いだった。