トップページデータノートストーリー紹介【ツバサ−RESERVoir CHRoNiCLE−】

Chapitre.228−重なる想い

「だめ。貴方達が囚われてまた離ればなれになるなんて。
 …夢で視た、未来のままに…。」
「どうしてそれを…!」
「視ていたから。
 止まった時間の中でも、貴方を通してずっと貴方が視てきたものを。」
 目覚めたばかりのもうひとりのさくらに、真意を見透かされていたさくら。彼女は続ける。
「だから分かってる。貴方がどれ程わたし達を大切に思ってくれているか。
 でも…、それはわたしも同じ。」
 一枚の障壁で区切られたもう一つの部屋でも、「二人」の応酬が繰り広げられていた。
「何故手をとった!?
 巻き込まれるのが分かって…!」
 自らを犠牲にしてでも、『もうひとりの自分』の幸せを願う想い。それを『否定』した小狼が、やや向きになって答える。
「分かっていたからだ!」
 彼は、父でもある小狼に反論する。
「言ったな。大事な存在だと。
 …それはおれも同じだ!」
 小狼とさくらの二人が取った行動と真意は、全く同じものだった。
「おのれ、写身共め!」
 二組の小狼とさくらを、魔法具の中に捕らえてしまった飛王。どこまでも意に反する行動を取る彼らに対し、飛王は完全に我を忘れ、怒りと憎悪を募らせる。
 飛王が魔法具にかまける間も、残された黒鋼とファイは4人を救い出す術を探っていた。圧倒的な力の差を前にしても、二人は怖じることはなかった。
「あれは俺がぶっ壊す!あいつらを!」
「分かってる!」
 目標は、飛王の手中にある魔法具。ファイは魔法で、黒鋼は剣撃で、それぞれ攻撃を仕掛ける。…が、いずれも魔法具に張り巡らされたバリアによって阻まれる。
「邪魔だと言っただろう!!」
 飛王が、二人に向き直り魔術を放つ。散弾銃のごとく四散する礫(つぶて)は、小粒でも鋭い威力でファイと黒鋼の体を貫く。
「これは中に引き入れた者の許し無しには、壊すことは出来ん!」
 二人を前に己の力量を認識したのか、飛王の顔に再び恍惚とした自信が甦る。
 
 一方、ファイの懐に立つモコナは、飛王が手にする魔法具を見て、独り言のように呟いた。
「あれ、侑子の所にあったのと同じだ…。
 …クロウが、作ったの…。」
 
 飛王の瞳が、再び鋭く、そして狂気の色を帯びる。
「写身共め!!
 この世、いや、全ての次元から消し去ってくれる!」
「そいつらに触るな!」
 飛王の一つ一つの言動が癇にさわるファイと黒鋼。怒りを込めて、再び攻めの手を放つ。結局、攻撃は飛王の反撃を前に打ち消されるが、それでも飛王の表情には疲労が積もりゆくのが見て取れた。
 
 魔法具の中からファイと黒鋼の戦いを窺う、二組の小狼とさくら。圧倒的に不利な戦局にも関わらず、彼らは一つの望みを掴みかけていた。
 −−−夢で視た未来を変えるのは、難しい。それでも、共に旅を続けてきた小狼、さくら、ファイ、黒鋼、そしてモコナがいれば、
「未来は選べる」
ということを。