トップページデータノートストーリー紹介【ツバサ−RESERVoir CHRoNiCLE−】

Chapitre.216−生と死の狭間

 日本国、ネガイが叶うミセ。
 侑子の背中から、突如鳳蝶の如き美しい羽根が現れるとともに、その躰が光を放ち出す。とともに、宝物庫に納められた硝子製の円筒からも、光を帯びだした。
 中央に隔壁を有するそれは、侑子がかつて「あの二人」の肉親達から託されたもの。その中には、自らの力で片や中華式の、もう一方は中心に五芒星を据える魔法陣を発動させて時を戻し、子供達と離れ、隔壁によって交わることのない空間に分け隔てられた「二人」…、小狼とさくらが居た。
 
 それぞれが、それぞれの場所で、それぞれの想いで、この時を待っていた。
 侑子は、この店の宝物庫でさまざまなモノ達の中に「二人が存在する『世界』」を隠し、そして護ってきた。
 二人は、近くとも手が届かない二つの場所で、最愛の人とも触れあえず、何も出来ず、ただ『待つ』という『対価』を支払い続けてきた。
 飛王の野望により世界の理に綻びを来たした今、時間ごと切り離されたはずの侑子の周りにも変化が生じていた。
 「あたしの時が動き出した今だからこそ、
  生と死の狭間に在る今だからこそ、
  生と死の狭間に在る今だからこそ、」
 あくまで平静を保ち、それでいて持てる力を振り絞りながら、彼女は魔法を発動させる。
 「夢を通じて渡す事が出来る。
  …『待ち』続けた、二人の力を。」
 両腕を広げ、魔力を開放する。次の瞬間、二人を分かち続けた円筒が、粉々に砕け散る。
 
 その力は、すぐに異世界である玖楼国にも異変をもたらす。出現した、空間を支配するほどの巨大な魔法陣。そこからあふれ出たエネルギーは、暗幕のように二人を覆う。それは、飛王にとっても想定外の出来事だった。
 隔離された、世界。その中には小狼とさくら、そしてその背後に、もう一人の小狼、そしてさくらの姿があった…。