トップページデータノートストーリー紹介【ツバサ−RESERVoir CHRoNiCLE−】

Chapitre.213−比類なき力

 東京国。酸性雨により侵食された大地にそびえ立つ二塔の楼閣。その地下には、豊富な水と共に、さくらの「訣別」が残されていた。
 記憶の羽根が集まれば、大切なものを取り戻せる。そんな望みを抱きながら、旅をした頃。その旅路の中、東京国で彼らが直面した現実は過酷なものだった。
 数少ない居住区である都庁。強烈な酸性雨から身を守り、命の源である水を蓄えるこの場所を護っていたのは、記憶の羽根の力だった。しかし、その羽根は持ち主の元へ戻り、慈悲なき雨は都庁をも蝕み始めた。
 都庁ではもう一つ、忘れられない出来事があった。彼女にとって大切な人であった小狼が、飛王の傀儡としての本性を覚醒した場所であった。共に旅を続けた魔術師・ファイの左眼を抉り取り、追いかけてきたオリジナルの小狼を傷つけ、引き留めようとするさくらの手を振り払い、一人記憶の羽根を追い求めて旅立った場所。そこが、都庁だった。
 彼女は、自らの記憶を再び紡ぐ事よりも、周囲の幸せを取り戻す事を願い、自身の羽根を都庁の地下に沈めた。…羽根は、静かに東京国の平和を護り、眠る。そのはずだった。
 重なり合う、玖楼国と東京国。異常に共鳴し、反応する羽根。水面へ浮かび上がるや、惹きつけられるようにさくらの躯へと飛んでいく。…それが、悪しき者が企図することでも。
 「みんなを悲しませる事に使うなんて、絶対だめ!!」
 さくらの優しさを知るモコナは、必死に叫ぶ。しかし、願いむなしく、羽根は彼女の躯へと取り込まれる…。
 比類なき力を蓄えた、水底で眠り続けてきた羽根。そして、様々な次元を刻み込んだ、さくらの躯。その二つが融合するとき、辺りに異変をもたらせる。
 「その力で、それぞれの次元を繋ぐ鎖が千切れ、世界の最も強固な理が崩れる。
  …死者は生き返らないという理が!」
 身震する飛王と、おびただしいエネルギーを発し始めたさくらの躯。目眩く野望の結末が、いま明らかになろうとしていた…。