トップページデータノートストーリー紹介【ツバサ−RESERVoir CHRoNiCLE−】

Chapitre.184−切り取られた時間

 玖楼国。砂漠の中にあるこの場所に、三人は立っていた。
 そこは全ての始まりであり、さくらの想い出が凝縮された地であった。
 玖楼国は、街と外を区切る門の近くに居住区があり、城はその先にある。
 『切り取られた時間』。敵の手中に、自ら飛び込んだ三人。だがそれは、避けては通れない道である。緊張した面持ちで、彼らは街中へと足を踏み入れた。
 そこにあるのは…、多数の人々が行き交う賑やかな市場だった。戸惑いを感じる『小狼』。そこに、リンゴ入りの篭を頭上に掲げて歩いて来た少年が、目の前で躓く。慌てて手を添える『小狼』。おかげでリンゴは頭上からこぼれ落ちることはなかった。
 市場を見て回る三人。すると、先ほどの少年が店先で手を振っている。彼は母親と彼らに礼を述べ、また異国から旅してきた三人を自分たちの家へ招き入れる。三人は、一夜を明かす寝床と共に夕食を振る舞われる。少年の母親はさらに、朝食にとリンゴの入った「パーユ」を食卓に残した。
 翌朝、再び食卓に集う三人。そこで彼らは、一つの異状に気付く。食卓に残されたはずの、パーユがない。何かあったのかと、慌てて家の外へ飛び出す『小狼』。そこにあったのは、昨日と変わらない、賑やかな市場の風景。立ちすくむ三人。そこに、リンゴ入りの篭を頭上に掲げて歩いて来た少年が、目の前で躓く。慌てて手を添える『小狼』。こぼれ落ちずに済んだリンゴ。そこでようやく、彼らは『切り取られた』時間の意味を知る…。