長剣によって、刺し貫かれるさくら。
彼女は己の素性を知っていた。…写身の、偽りの存在であることを。それでも彼女は、彼女らしさを持って旅を続けてきた。
剣を手にしたまま呆然とする小狼を前に、彼女は語る。
「わたし達は創りものでも…同じ…だから
あの二人が生きていてくれれば…終わり…じゃないから…」
小狼の胸に抱かれながら、彼女は最期の言葉を遺す。
「…貴方が……す…」
その腕に感触を残したまま、
その懐に温もりを残したまま、
彼女はその名が示すとおり「さくら」となり、散る。
手のひらに舞い落ちる花びら。
その時初めて、小狼は失ったものの大きさを「感じた」。
だが。悲嘆に暮れる間もなく、飛王は一手を差し向ける。
ジェイド国で、そしてピッフル国で遭遇したカイル。次元の峡間から突如現れた彼は、「器」となったさくらの躯を、戦いの間にこぼれ落ちてしまった羽根とともに奪い去る。
「待て!」
『小狼』の制止もむなしく、再び異次元へと消えるカイル。日本国に残された『小狼』、そしてファイと黒鋼。彼らはまた、小狼の姿もないことに気づく。
…辺りを、再び緊張が支配する。