願いを叶えるミセ。侑子は、店先に植えた桜の花びらが舞い散る様子を、やるせない想いで眺めていた。
これまで小狼達と旅をしてきたさくらだが、決して旅のはじまりから己の素性を知っていたわけではないようだった。自分が「写身」だと知ったきっかけ、それは東京国で手に入れた羽根だった。知ってしまったが故に、彼女は『小狼』と距離を取る。知ってしまったとしても、彼女は「さくら」らしく運命に抗う。なぜなら、彼女は「躯」のみならず「心」までも写し出された存在だったからだ。
飛王は、元となるさくらが手の内にあれば、換えが利くと考えていた。
事実、「写身のさくら」は、飛王によって「創られた」に過ぎない存在だった。
それでも。
たとえ叶わずとも、彼女の願いを叶えようとした男がいた。
散ってしまった彼女の「魂」を、かけがえのないものとした男がいた。
そして。
さくらの笑顔を、幸せを、そしてその存在を、何よりも大事とした男がいた。
不意に、侑子の懐にいるラーグ(黒モコナ)の額から投射された映像。そこにあるのは、ファイ、黒鋼、そして『小狼』の姿だった。
『小狼』は侑子に向かって、願いを口にした。それは、飛王の手の内に在るさくらと、連れ去られたさくらの場所を知ること。
侑子は訊いた。その願いは、3人の願いなのか、を。
ファイ、そして黒鋼の返答は、早かった。
「さくらは絶対死なせない!」
強い覚悟と誠意を胸に、3人は再び異世界への扉を開ける!