夢の世界から飛び出てきた小狼と『小狼』。二人はともに一つの羽根を追い、宙へ跳ぶ。そして、雌雄を決するべく再び剣を抜く。
が。
剣の先にあったのは、さくらの姿だった。
呆然とする小狼。悲痛の声を上げる『小狼』。だが、彼女は最期にこう言った。
「あなたのさくらは、わたしじゃない…」
飛王の思惑通り、玖楼国の遺跡に取り込まれたさくら。やがて彼女は記憶を秘めた羽根を探すため旅に出る。だがそれは、飛王が作り出した「写し身」の存在だった。写身のさくらに課せられたのは、躯に次元の記憶を刻むこと。しかし、危険を伴う旅には不慮の事態がつきまとう。そこで飛王は写身を用意して旅立たせ、本当の「さくら」は「もう一つの役割のため」に、生きて飛王の手の内にあった。
記憶を羽根に変えて、様々な次元に飛び散らせる。写身の小狼は、姫の命を救うためだと信じて羽根を追う旅に出る。その姫もまた、写身の存在であることを知らずに…。
次元を越える力、行方を指し示す翼。全ては、己が願いを叶えるための力、「時空を越える能力」を手に入れるために、飛王が入念に施した罠であった。