静寂に包まれた世界の中で、二人の小狼がまさに相まみえようとしていた。
飛王・リードにより生み出された小狼と、オリジナルの存在である『小狼』。その風雲急を告げる脈動は、異世界であり、これまで彼らと共に時間を過ごしてきた仲間達が集う日本国・白鷺城にも鳴り響いていた。さまざまなものと代償に旅を続けてきた彼らにとって、そこは手が決して届かない場所。そこで始まる死闘に、彼らが今できる唯一の事は「信じて、待つ」ことのほかになかった。
剣技と足技が激しく交わる戦い。その傍で、バリアで分け隔てられた空間に一人取り残されるさくら。その目の前で、大切な者同士が傷つけあう惨劇が繰り広げられていた。
やがて両者の術が一巡するや、双方とも勝負を決するための勝負に出る。ファイから引き継いだ強大な魔術と、練熟された秘技・雷帝招来が衝突する。その技を発動する中、突如小狼の右眼に異変が起こる。崩れる均衡、そして「小狼」を襲う雷撃。その炎が彼の体を覆い包む時、さくらの叫びが響き渡る。
「…小狼!」