星史郎と小狼が戦いを繰り広げる結界の外には、知世姫とファイの二人が取り残されていた。知世姫は、ファイが誰に問うことの無かった問いかけを、穏やかな眼差しを向けながら解いていく。
夢見は、その夢の中で互いの存在を知ることができる。アシュラ王もまたその一人だった。彼は未来を視、少しでもファイに救いの道がないか模索し続けていた。だが、ファイはその試みを知った上でなお、王の振る舞いに不可解な点があることを知っていた。彼女はまた、その謎の原因を知っていた。飛王・リード。彼は己の望みのため、理(ことわり)を壊し、道筋を変えようとしていた。その望みは、「死んだ者を生き返らせる」こと。誰もが願いながら、決して覆せない理である。
一方の戦場では、乾坤一擲の一撃が小狼の手から放たれる。しかし、それも星史郎にとって有効な一打とはならない。一方、星史郎の懐で眠っていたさくらの羽根が、その閃光によって目を覚ます。再び星史郎に襲いかかる小狼に、羽根は独りでに星史郎の手から離れ、宙に浮く。そして、ここではない世界、夢の世界への扉を開けて見せた。仮想世界である桜都国を現実のものにしたその羽根は、日本国の神木の力をも巻き込み、小狼に「踏み入れることができない」はずの世界へ誘う。
開かれた、禁断の扉。小狼にためらいは無かった。
「戻って来る。サクラ姫と一緒に」