東京国に、朝陽が昇る。
その光りは、これまでの闇をもかき消さんとしていた。
東京国で彼らは、これまで以上の傷を負った。そして、かけがえのない存在をも失った。だが、同時に自らの「願い」を明確にし、新たな目的のために旅立つための一里塚ともなった。
そして、さくらはいままさに、それまでの旅の目的を自ら転換させようとしていた。『自らの記憶を取り戻すための旅』から、『小狼の心を取り戻すための旅』に。決意を胸に、彼女は懐に抱えた記憶の羽根を、その手で水底へ沈めたのだった。
さくらが九死に一生を得る想いで手にした大蛇の卵を手に、侑子は呟いた。
「…この旅を仕組んだ貴方からすれば、あたしが介入するまでは予定通りでつまらない旅だったでしょうね。…飛王・リード。」
そして、その名の男もまた、別の異世界を見ながらほくそ笑む。
「やはり旅を続けるか。…お前の働きは、無駄にならずに済みそうだ。」
飛王が眺める先の世界。そこは、飛び去った羽根を求め、手にした緋炎で周囲を焼き尽くさんとする小狼の姿があった。