さくらがいない、東京都庁。残されたのは、モコナ、ファイ、黒鋼、そして『小狼』。
『小狼』は着衣の紋章を痛く気にしていた。それは、黒鋼の母を、異次元から殺めた者が残した印であった。その様子を気にかけた黒鋼は、手近なローブを彼に放りかける。
『小狼』は、答えられなかった。飛王の居場所も、そして写身であるもう一人の小狼の行方も。
黒鋼は、答えを求めていた。いろんなものを失った今、これから彼らがゆく先を。
さくらは、体中に傷を負いつつ、ようやく目的地へたどり着いた。求められた対価、それは大蛇のタマゴ。しかし、タマゴを守るように、2匹の「親」が立ちはだかる。右脚から滴り落ちる鮮血。それを美味しそうに嘗める蛇。敵としてだけでなく、捕らえるべき「餌」としても標的にされている…。その事実にさくらは思わず後ずさる。だが、背後には酸の湖。声にならない叫び、威嚇する大蛇の咆哮、思わず手放した銃。鎌首を掲げ、襲い来る蛇の攻撃で、身を岩壁に打ち付けられるさくら。だが、その手の伸ばした先に、放り出された銃が。彼女は、必死の思いでその頭に弾を撃ち込む。
大蛇の屍を越え、酸の湖に足を踏み入れ、ようやく手にした対価。
「わたしはこれからも、誰かを傷つけて何かを奪う…自分勝手な理由で…。」
対価を手にしたとき、彼女の身体には至る所に大きな傷を負っていた。だが、彼女は知っていた。何より痛むのは、身体ではなく心であることを。そして、傷を対価に、彼女は知った。彼女の、胸の内にある真の願いを…。