目を覚ますファイ。その眼前には、黒鋼の姿がある。
つかみかけた死という名の「やすらぎ」を目の前にしながら、力ずくで遠ざけた男。ファイは起き抜け一番に、彼にこう交わした。
「おはよう、『黒鋼』。」
もう、誰も不幸にしたくない。だから、自らを戒め、越えてはならない一線をもう一度明確にする−。その一言は、溶けかけた氷を、自ら再び凍てつかさんとする『氷の魔法』を秘めていた。
一方、都庁の地下を満たした水と引き替えに、夜の東京を旅するさくら。険しい道のりに、右脚の怪我が彼女の行く手をより困難にする。目的地に着こうとするころ、彼女の身体のあちこちから紅い血が流れていた…。