トップページデータノートストーリー紹介【ツバサ−RESERVoir CHRoNiCLE−】

Chapitre.122−右目の思い出

 わたしの大切なひと達。わたしの大切なひと…、わたしのいちばん大切なひと…。
 長い夢から目を覚ましたさくら。だが、視界に広がるのは凄惨な「悪夢」そのものだった。
 彼女と共に旅をしてきた仲間の一人は美しい瞳を失い、一人はやるせない状況に歯軋りするばかり。何より、彼女がようやく気づいた「一番大切な人」は旅の友の血で顔を染め、さらには同じ姿のもう一人と一触即発の雰囲気。
 悪夢を解き放ちたいと、叫ぶさくら。だが、その声も、その手も彼には届かない。少年は、凍てつく眼差しで彼女を一瞥する。
 
 向かい合ったもう一人の少年は語る。解き放たれた右目の封印。それは彼がかつて渡した心の半分だった。一度切れた封印を再び施すことは、いかなる手を使ってもなし得ぬことだった。それを、ファイは承知の上で賭けてみた。…自らの片眼をも引き替えに。だが、彼は知っていた。偽りの心であっても、さくらへの想いは少年だけのものだということを。 
 しかし。言葉を聞いたのか聞いていないのか、冷徹な眼をした少年は、心の持ち主である少年に向けて鋭い蹴りを放つ。防戦一方の少年。それに加勢すべく、黒鋼はついに加勢を決める。だが、刀を受け取ろうとする彼に、非情な干渉が加わる。モコナの口から出てきたのは、彼が持つ蒼氷ではなく「緋炎」。その剣の力に、奪い取った魔力をも込め、少年は無慈悲な太刀を振り払う!