トップページデータノートストーリー紹介【ツバサ−RESERVoir CHRoNiCLE−】

Chapitre.114−囚われの姫

 気づいた世界は、夢の中。
 でも、冷たくもなく、呼吸もできる不思議な場所。
 彼女は、水底に光るものをみつける。
「君は…?」
 ひかりの中から、問いかけられる。名前を答えると、声が続けられる。
「ここにいちゃ、駄目だよ。」
 水底で、眠り続けているという声の主。
「君は、起きないと。」
 わたし、眠っているの?…状況が理解できていない彼女。
「目を覚まして。…夢に囚われる前に…」
 だが。まぶたが、重くなる。カラダの自由が、利かなくなる。やがてその身が、ひかりの中に取り込まれてしまう…。
 
 その時、ファイと小狼は、草薙たちとともに居住区の外に出ていた。
 目的は、砂漠と化した街に棲まう怪物を倒して食料とすること。
 数メートルに及ぶであろう体長と、大人一人を丸呑みにできるほどの巨大なクチをもつそれは、降りしきる酸性雨がもたらした変異種だという。草薙たちが喉元を狙って放つボーガンは見事的中し、巨体が地面へ打ち付けられる。だが、息を吹き返した敵は再び鎌首をもたげ、仲間の一人・那叱(※)を襲う。その危機に、小狼は緋炎を鞘から抜き、その刃で両断する。
 窮地を脱し、那叱との距離を近づけられた小狼。和む場を、モコナの張りつめた声が切り裂く。
 「…サクラの羽根の気配、強くなった!」