トップページデータノートストーリー紹介【ツバサ−RESERVoir CHRoNiCLE−】

Chapitre.113−凍てつく心

 「小狼…小狼…」
 透明の隔壁の向こうから、呼びかけてくる声。
 声の主は、自分と同じ顔の少年だ。
 彼が、左手をさしのべる。つられるように、右手が動く。
 二人を隔てていたはずの壁が、彼の手により砕かれる。
 少年にとっての何かが、砕かれる。
 
 目覚めるとともに黒鋼の腕を取る小狼。
「…小僧」
と声をかけた黒鋼。だが、その瞳を見て、それが「小狼とは違う別人」であることに気がつく。捕まれた腕とは逆の掌で、少年の腕を掴む。すると、少年は元のあどけなさを残す瞳を取り戻す。
 その一部始終を見ていたファイ。着替えを差し出した彼は、小狼と共に出かける提案をする。都庁で留まるための条件、つまり働き手として力を貸すことだった。
 一方、留守番をする黒鋼の横で眠りについたままのさくらだが、気づくとその身が水の中にある感覚に陥る。