トップページデータノートストーリー紹介【ツバサ−RESERVoir CHRoNiCLE−】

Chapitre.112−魔術師の素顔

 交渉の結果、「都庁」と呼ばれた建物の中に寝床を確保できた4人。羽根を取り込んだために眠りの世界に居るさくらと、手負いのキズのせいで発熱が懸念される小狼を横たえるファイ。二人の様子を案ずる彼の様子を黙ってみていた黒鋼だが、言葉少なく、しかし仮面の皮を一枚ずつはぐように、ファイに問いかける。
 なぜ、高麗国では危機だったにもかかわらず使わなかった魔法をレコルト国で使ったのか。
 なぜ、人とのつきあいを拒みながら、さくらと小狼の身を案ずるのか。
 なぜ、生に執着が無いにもかかわらず「オレは死ねない」のか、誰かのせいで死ぬ機会を得たのにそれをふいにするのか…。
「自分から関わったんだ、あいつらに」
 表情から笑みが消えたファイは答える。
「オレが関わることで、誰も不幸にしたくない…。」
「おまえの過去は関係ねぇんだよ。
 いい加減、今の自分に腹ぁ括れ!」
胸に突き刺さる、「覚悟の男」黒鋼の一言。
「あはは…難しいよ、オレには。」
そういうと、彼は力なく壁にもたれ込んだ。
 
 一方、次元の果てにある飛王の居所では、封印されていたもう一人の少年が、まさに覚醒の時を迎えようとしていた。左目に眼帯を巻くその少年は、封印具を破壊して地に足をつけるや、「小狼」という名をつぶやいた…!