トップページデータノートストーリー紹介【ツバサ−RESERVoir CHRoNiCLE−】

Chapitre.73−二人の力

 振り下ろされたチェッカーフラグ。一斉に飛び立つドラゴンフライ。軌跡はまっすぐ、目指す先は予選のゴール!…のはずが。さっそくあさっての方向に向かう機体がある。まだ操縦に不慣れなさくらが操る、ウィングエッグ号だ。
 心配して後を追いかけた小狼の助言を得て、かろうじて持ち直したさくらの機体。頭上には、ピッフル・プリンセス社のマスコットキャラをあしらったフライヤー「ピッフルGO」と、社長、知世・ダイドウジの姿。一瞬たりともさくらの姿を取り逃すまい、とビデオカメラを構える彼女は、容姿のみならずさくらの優しさや心遣いにも惹かれていく。
 相変わらずの軽口をたたきながらフライヤーを操るファイと、相変わらずの仏頂面である黒鋼。初参加ながらもドラゴンフライレース上位入賞常連組に食らいつく健闘ぶりだ。
 二人の活躍の一方で、相変わらず後を追いかけるさくらが気がかりの小狼。だが、さくらは彼に叫ぶ。
「力 いっぱい飛んで!わたしも精一杯がんばるから!」
目配せをして、健闘を誓う二人。そこに強い突風が襲い来る。先を行く黒鋼、ファイと小狼の三人は風をかわすことができたが、次の瞬間、強い不安に駆られる。
 未だ操縦がおぼつかないさくら。ドラゴンフライは軽量で、風の影響を受けやすい。直撃を受けたなら…その先は想像に難くない。
 「…来る」。突風の襲来を感じ取ったさくら。次の瞬間、無意識に身体が動く。舞うように華麗なターン。見事に危機を逃れた彼女を見て、またも顔を紅潮させる知世。盛り上がった場にさらなる演出を加えようと、優勝賞品である充電電池(=さくらの羽根)を、その頭上に掲げた。羽根はまっすぐに光の道を指す。示すのは、雲間のむこうにある塔、予選のゴールだ!