トップページデータノートストーリー紹介【ツバサ−RESERVoir CHRoNiCLE−】

Chapitre.72−忘れ得ぬ人

 「ここでこうすれば曲がりますから。」
 まだフライヤーの操縦に不慣れなさくらを手ほどきする小狼。だが、その手と手が触れあう度、頬を赤らめる二人。その姿を微笑ましいと思いながら見ているのは、ファイと黒鋼。
 「そういえば、今日の黒たんも微笑ましかったー」
と茶化すファイ。街で偶然であったピッフル・プリンセス社の社長、知世・ダイドウジ。他人のそら似…とわかっていながらも、つい気にしてしまう彼の姿をつい冷やかしてしまうのだ。
 「…おまえはまだ会ってねぇようだな。逃げなきゃならない理由と」
 黒鋼は言葉を続ける。
 「同じ顔でも、同じ奴とは限らねぇけどな。」
決して本音を明かさぬ二人。だが、長い旅路は互いの「核心」を探り当てるための時間と機会を与えたようだ。
 口を開くファイ。
 「…分かるよ。ただ同じ顔をしているだけなのか、それともあの人なのか。」
この時のファイの表情は、笑みでぼかしたポーカーフェイスではなかった。決して逃れることのできない宿命を背負ったかのような、覚悟と悲壮感。深い影が射したファイの瞳が語る真実を、どうやら黒鋼は感じ取ったようだった。
 
 日が変わり。ついにさくらがドラゴンフライレースに挑む時がやって来た。ドラゴンフライレースで飛ぶのは2回。予選で20位以内に勝ち残れたら、本選へコマを進める。そして、そこで優勝できれば、優勝賞品である「充電電池(エネルギーバッテリー=さくらの羽根)」を手にすることができる。優勝賞品につられて挑む参加者数は、過去最高。そこには、小狼が桜都国で鬼児との戦いを通して絆を深めた龍王や譲刃に加え、阪神共和国で出会った笙悟や正義、高麗国の春香やあの領主の姿が。これまでの旅路の中で、別の世界で出会った人たちの姿をやたらと見かける中、ついにドラゴンフライレースが始まりを告げた!