トップページデータノートストーリー紹介【ツバサ−RESERVoir CHRoNiCLE−】

Chapitre.67−神の始まり

 崩れ落ちる、月の城。
 叶えられぬ願いを前にした阿修羅王の頭上に、巨岩が襲い来る。
 剣を手にし、それを両断した小狼。その姿に、阿修羅王はこう呟いた。
「…昨日よりは今日、今日よりは明日。戦うたびに強くなる。そういう強さだな。」
 
 阿修羅王の願い、それは刃を交えた間柄である夜叉王を蘇らせることだった。
 死者を蘇らせること、それは神と呼ばれる存在でさえもできないことであるということ。だからこそ、限りある時間を、自分が信じるもののために精一杯生きるように。小狼が、父が遺した言葉を口にすると、阿修羅王は共感の眼差しを小狼へと返す。が、そのとき、城の崩壊が小狼の足下にまで迫り来る!中空に舞う小狼の躯。それを引き寄せた腕。それは、先刻小狼が刃を向けていた黒鋼のものだった。再び小狼が阿修羅王へと視線を向けたとき、あたりが揺らめいた。それは、月の城から追い出される時間が来た合図だった。
 
 ただ一人、月の城に残った阿修羅王は、異世界の『魔女』・侑子を呼び出す。
 阿修羅王は語った。なぜ彼が幻とはいえ再会できた夜叉王との時間を打ち消した訳を。そして、彼が遺せる最期の願いを。
 ついに砕け散った月の城を眺める小狼たち。月の城。そこでの想いは、形を変えて世界を谺することになった…。