トップページデータノートストーリー紹介【ツバサ−RESERVoir CHRoNiCLE−】

Chapitre.53 二つの力

しとしとと雨が降る。その中には手や足に怪我を負った小狼の姿も・・・。大人達は怪訝そうな顔でこちらを見ている・・・。雨に濡れる小狼は、ふと顔を上げるとガラスだろうか、そこには驚いた表情の自分の姿が映っている。「誰?」いったい自分が何者かもわからない、そんな不安な表情の小狼。
ハッと、気がつくとそこは、全くどこか分からない。目の前には心配するサクラの姿が。怖い夢をみていたのか?サクラがすごく心配している。心配は無いと笑顔で答える小狼。しかし、その笑顔の奥には少なからず不安があるのかもしれない。
新しい国に来たことに気づいた小狼。しかし、その場には、黒鋼とファイの姿は無かった・・・。慌てる小狼、格子の窓から外を見ると、そこには江戸時代を彷彿させる楽しげな町の風景が広がっていた。
その時、部屋の奥から勢いよく入ってくる女性達。小狼やサクラを心配していたのだろう。気がついた事に安堵の表情というより、楽しそうに話しかけてくる。モコナに黒鋼とファイの事を詳しく訪ねていた、その瞬間、「ちょいとお待ち!」奥より威勢のいい大きな声が!
仕事中に油を売っている女性達に檄をとばす一人の女性。その女性は鈴蘭ちゃんと慕われていた、どうやらここの主人(オーナー)らしい。さらに鈴蘭に対し、大目に見てやるようにと声をかけてきたのは、火煉太夫(かれんだゆう)と呼ばれる女性だった。その後ろには双子だろうか、秘書ともとれそうな雰囲気の女の子が立っている。
鈴蘭は小狼に怪我や倒れていた理由などを聞き、ここ遊花区で預かってくれると申し出てくれた。しかし雰囲気が飲み込めずキョトンとしている小狼とサクラであった。
一方、黒鋼とファイは神社の前に居た。前回旅をした国について疑問に思っている事を話していた。暑いところで生える植物、暑いのにも関わらずモコモコふわふわしたウサギ、偶然とは言い難いタイミングで見つかった羽根、すべてが仕組まれていたのでは?と二人の頭の中はそんな疑問がよぎっていた。黒鋼は、旅を始めてから時々、誰かの視線を感じるとファイに打ち明けた。
そのとき、上の方から大きな声が!!「ここに来ていい所じゃない」そういうと、襲いかかってきた。黒鋼はここぞとばかり反撃。後ろで茶化すように応援するファイ。さらに男達が攻撃を仕掛けてこようとした、そのとき、後ろから「おやめなさい!!」と攻撃を制止する声が聞こえてきたのだった。


「秘書ともとれそうな雰囲気の女の子」=「禿」(かむろ)といって、太夫、天神など上位の遊女に仕えて、その見習いをする六、七歳から一三、四歳ぐらいまでの少女のことを指すそうです。