翌朝。スピリットの村は、すっかり辺り一面銀世界となっていた。
夕べ見た女性の姿が、脳裏から離れないさくら。そこに、静けさを切り裂く叫び声が聞こえる。
「子供が!子供がどこにもいないんです!!」
…どうやら今回行方不明になったのは、さくら達がこの村に来て最初に出会った少女らしい。家には鍵がかけられていたが、中から開けられたようだ。彼女が自ら開けたとも考えにくい。
さくらはずっと気にかかっていた言葉をつぶやく。
「じゃあ、あれは夢じゃない?」
さくらが語った女性の姿は、まさしく伝説に記された『金の髪の姫』と一致する。恐怖におののく村人たち。そこに一喝。どよめきを打ち消した声の主は、村の有力者・グロサムだった。彼は依然としてよそ者であるさくら達を疑っているらしい。
カイルの家に戻ったさくらは、金の髪の姫のことを話す。あのとき自分が外に出ていれば、と悔いるさくら。夢や伝説と考えていた『金の髪の姫』の話は、史実と考えられているようだ。
歴史は語る。三百年前に、エメロードという姫が実在したこと。彼女の父母が亡くなった後、次々と城下町の子供達が消えたこと。そして、いなくなった時と同じ姿では、誰一人帰ってこなかったこと…。
とはいえ、どうやら町で他に『金の髪の姫』の姿を見たものは、さくらの他にはこれまでにいないらしい。
小狼は、そんなジェイド国の歴史に注目する。彼は、書物や歴史が真実のみを語っているとは限らないと考えているからだ。
村長宅で歴史書を借り、やってきた先は、かつてのエメロード姫の居城、北の城。急流に阻まれた城にはかつて橋が架かっていたようだが、今はそれはなく、他に城へ入る道はないようだ。
子供達が消えた手がかりも、羽根が発する力の気配も掴めないまま、帰路に就くさくら達。そこに通りかかった人影。城以外に行く当てもない道を行くその人物は、見間違えることもなくグロサムだった。
その夜。再びさくらの眼に、夕べと同じ女性の姿が映る。家々から子供達が誘い出されて来たかのようにやってくる。雪の降る中、彼女が子供達を率いてやってきたのは、昼に見た北の城!行く手を阻む急流は、女性が手を差し出したとたんその流れを止める。そこを子供達は、水面を歩いて城へと歩を進めていったのだ!
一部始終を目撃したさくら。そこに突如襲い来る睡魔!降りしきる雪、人気のない森の中、意識を失った彼女の運命は如何に?