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Chapitre.203−側にいる者

 禁忌である、時を巻き戻すという願い。その対価は、己自身の「時間」と「自由」だった。時が流れ、彼が時を戻した齢になるまで、彼は飛王の下で幽閉された。しかし、彼の咎はその程度では収まらない…。
 もしも、時がそのまま流れていれば、ファイは双子として生まれることなく、ヴァレリア国とセレス国の未来が血に染まる事はなかったかもしれない。もしも、時がそのまま流れていれば、黒鋼が生まれ育った諏倭国は魔物の襲来を受けることなく、さらには彼の母が凶刃に倒れる事はなかったかもしれない…。
 小狼は、考えた。あの時の選択こそが、二人の人生を歪めた元凶であったとしたら。
 それゆえ、彼は共に旅を続けた黒鋼とファイに真実を語り、そして目を閉じて審判を待った。
 
 黒鋼が、小狼の元へと歩み寄る。そして…、彼の頭に拳骨をおろす。
 ファイは…、両手で彼のほほを挟むように軽く叩く。
 「選んだよ。」
 時間を巻き戻したことで、確かに小狼は禁を犯した。しかし、その後起きた出来事の全てが彼の責によるものでない。二人は分かっていた。同じ選択を自分が取るなら、どのように答えるかを。それゆえ、彼らは小狼を責めなかった。
 「じゃあじゃあ、モコナからも」と、小狼の肩に居たモコナは小狼の頬にちゅっと口付けする。
 「おれの側には、こうやっておれが居る事を受け止めてくれる人がいる…。」
 小狼は、伝えたかった。異世界で歪みを支える、もう一人の自分に。おまえが消えないように願い、その人達の為におまえ自身が消えたくないと願える人達がいることを。
 小狼もまた、意を新たにした。己の願いのために、自分が出来る事をやる。あの時巻き戻し、止めた時間を進めるために・・・!