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第33話−阿修羅のイワレ


 小狼が目覚めたとき、彼は見知らぬ国の屋敷の中にいた。そばには、次元を超える力をもつモコナと、彼が守るべき姫君・サクラの姿。だが、共に旅をしていたはずの黒鋼とファイの姿が見つからない。
 小狼とサクラが降り立った世界、紗羅ノ国。二人は旅芸人である鈴蘭一座の屋敷の前で倒れていたという。二人は鈴蘭一座の元で面倒をみてもらうことになる。彼女たちは国を巡る旅芸人で、年に一度、月が綺麗な時期に、自分たちの住処でこの地に戻って公演することがなによりの楽しみだという。
 
 一方、黒鋼とファイは、小狼たちとはほど近い場所に降り立っていた。二人は「人々を災いから守る、聖なる場所」という社の中で祈りを捧げる神主・蒼石に世話になることになった。 
 
 サーカスのようなダイナミックな芸を繰り広げる鈴蘭一座。だが、彼女たちの技はそれだけではなかった。看板娘である火煉太夫が見せる、触れても熱くない幻想的な「炎」。その力は、一座の「守り神」・阿修羅神が授けてくれる炎だという。
 一方、ファイたちもまた蒼石たちが守る夜叉像を目にする。阿修羅像と、対局の関係にある像。その右目から、血の涙がしたたり落ちる。それは年に一度、「月が綺麗な時期」に、阿修羅像に呼応するように流れるという。
 阿修羅は、戦いと災いを呼ぶ神。そして夜叉は、夜と黄泉を司る神。夜叉像が流す血の涙は、阿修羅が呼ぶ戦いと災いに対する警告と伝えられている。相容れぬ神を祀るが故に、社の一味と一座の旅芸人たちは対峙する運命だった。
 
 鈴蘭一座に交わり、芸の練習に励む小狼とサクラ。二人は練習のあと、黒鋼とファイを探すために深夜、街路へ出る。そこに、暗闇を疾走する影を見る。追う二人は、森の中で忍び逢う蒼石と鈴蘭の姿を見る。結ばれぬ定めと知りながら、恋に落ちる二人。それに呼応するように、二つの像に異変が起きる。「阿修羅と夜叉が互いに呼び合う」とき、空が割れ、その隙間から異なる次元が顔を覗く。