4人が次にやってきたのは、さまざまなものが魔法で生み出される国だった。だが、4人が一睡の後も、一向に陽は昇る気配がない。その理由は、国王に就任した少女がその職を拒んでいることに起因するという。太陽は魔力の源。陽が昇らないことは、この国にとって死活問題だった。4人の元に、王に仕える魔法の精霊、すももと琴子が現れる。彼女たちは、旅する魔術師であるファイに、少女が王位に就くよう説得するように請う。
国王は、年に一度、すべての国民が見る同じ夢の中に現れる人物が選任される。そして、城に幽閉されるとともに、それまでの記憶を抹消されることになる…。
一度は説得を拒んだファイ。だが、王位に就いたという少女を見てファイは吃驚する。それは、彼が旅立ったセレス国に置き去りにした、ちぃの姿だった。
「この子、寂しそうなの。」
ちぃを見て声に出したモコナ。ファイはちぃに手をさしのべ、語りかける。手と手がつながるその瞬間、二人は別の場所へ瞬間移動する。
城の外へ出た二人は、デートを始める。「チロル」という名のオープンカフェで、失った言葉をファイから教わる。街路で繰り広げられる道化師の芸を楽しみ、露店で売られるわたがしをほおばる…。ちぃにとって、至福の時間だった。
ちぃは尋ねる。ファイがなぜ、旅を続けるのか。ちぃは言葉にする。ファイとずっと一緒にいたい…。それは恋する少女の想いだった。
高ぶる想いは、新たな行動に結びつく。この街を出て、共に旅をしたい…。だが、それはちぃにとって「叶えてはならない夢」だった。ちぃの命もまた、ある魔術師により生み出されたもの。城塞都市の外に出ることは、彼女の「消滅」につながる。
己が過去から逃げる旅を続けるファイ。そして、彼と共に「逃げる」と口にしたちぃ。寄り添うちぃ。その仕草がいとおしいファイ。だが、逃げ続けることのつらさと彼女の運命を知るファイは、やんわりと諭すかのように断る。そのとき、二羽の小鳥が二人の元に舞い降りる。それは、王位についた後も憂鬱な瞳で城の外を見つめていたちぃのそばで、ずっとさえずり続けた鳥たちだった。
彼女は己の定めを知るとともに、意を決する。そして…この国に再び夜明けが訪れる。