第31話−少年のケツイ
モコナが次に降り立った場所、それは見渡す限りの大海原だった。
通りかかった船に拾われた4人。船内で、彼らはまたも見知った顔に出合う。一人は「ラグスタ号」の船長。かつて訪れたナユタヤ国で悪事の限りを尽くす領主、タンバルの「異世界の存在」だった。そしてもう一人は、小狼の育ての父親、藤隆だった。船の機関長を務める彼は、まだ小狼よりも幼い少年だ。小狼は、彼が機械を触る手つき、言葉遣いに亡夫の影を思い出す。
まだ「自分の夢」が見えないという少年・藤隆に、父・藤隆の事を語る小狼。そんな折り、突如彼らの海路に嵐がたちはばかる。二人は甲板に出た矢先、荒波により海に投げ出される。
夜が明け、嵐が収まったとき、二人は近くの無人島に漂着していた。「亡霊の島」と呼ばれるこの島で、小狼はトーテムポールの遺跡を見つける。それに記された碑文の解読を試みた小狼。彼は山頂への近道と、先人からのメッセージを受け取る。
山頂にある洞窟の遺跡。ラゴスタ号がいるとすれば島の反対側だ…。そう確信した小狼は、洞窟を通り抜けることを決意する。亡霊の鳴き声と思われたものは、洞窟を通る風の共鳴音。そして、その「神の歌声」が消えたとき、「神の息吹」なる猛突風が吹きすさぶ…。碑文の言葉を信じ、二人は洞窟を通り抜ける。
一方、小狼たちの安否を確かめるべく、ラゴスタ号のクルーたちも島へ進路を取る。船長・タンバルは、島の山頂に立つ小狼と藤隆の姿を望遠鏡で確認する。だが、船が島に近づいたとき、異変が起きる。彼らの元に、襲い来る水龍。「真に恐れるべきは、長きもの。」それが、碑文が教えたもう一つのメッセージの意味だった。
黒鋼の必殺剣で怪物を退け、無事救出された二人。救出が遅れたことを詫びるタンバル。これに藤隆はこう答えた。
「いいんです、探していたものが見つかりましたから。」
小狼と過ごした時間を胸に、少年は決意した。いつの日か、考古学者になることを。