トップページデータノート「XXXHOLiC」ストーリー紹介(コミック版)

戻 第34回

《xxxHOLiC・戻》第34回
  ヤングマガジン:2014年26号:2014.05.26.月.発売
 
通学鞄を左手にさげた2人は,門の前に立つと,その中に建っている店を見た。君尋は,もう片手で,鳥かごの風呂敷包みをかかえている。
しばらく店を見つめていた君尋が,足を“す”と門の中へ踏み入れた。
「いいのか」
後ろから,静が声をかける。
「…ああ」
「おれは,知らなければならないんだろう」「そして その上で 選ばなければならない」
風呂敷包みを左腕にかかえなおすと,右手でドアの取っ手をつかむ。
「だから」「侑子さんに会うよ」
 
中では,マルとモロが,上がり口に並んで立っていた。
「おかえりなさい 四月一日」
だが,その2人の声にも表情にも,いつもの明るさはない。
察した君尋は,いっとき沈黙したあと,ふだんのように声を返した。
「…ただいま」「マル モロ」
そして,片手を出したマルに鞄を渡しながら,2人に尋ねる。
「侑子さんは?」
「待ってる」と,モロ。
「四月一日を」と,マル。
「…そうか」
それだけ言うと,君尋は,包みをかかえ,2人の脇を通って廊下の角の向こうに消えた。
静は,不安げなマルとモロの頭の上に,ぽん,ぽん,と続けて手をのせた。
「おれ達も待とう あいつが何を選ぶかを」
3人は,奥のほうを見やった。
 
君尋が,引き戸に手をかける。
部屋にはいってみると,侑子は,長椅子でひじかけにもたれかかり,キセルをくゆらせていた。おなじみの姿態である。そして,前に立った君尋に語りかける。
「貴方が,今 こうして ここにいること」「ここにいて 選ばなければならないこと」
「この世に 偶然なんてないわ」「あるのは」
「必然だけ。」