トップページデータノート「XXXHOLiC」ストーリー紹介(コミック版)

戻 第2回

《xxxHOLiC・戻》第2回
  ヤングマガジン:2013年15号:2013.03.11.月.発売
 
客と侑子は円形テーブルをはさんで腰かけていた。君尋はお茶係である。その若い女性は,どうしてここに来たのかじぶんでもわからず,とまどっているようだった。
「この店に来る事が」「貴方に必要だったからよ」
侑子は,さらにひとこと。「中」
「はい?」
彼女は,口をあけた手さげ鞄を,ひざにのせていた。それのことだった。
「か,鞄って 別に何も」
それでも「何?」と問われ,テーブルの上に置いた。
立ち上がっている侑子が指さし,女性と君尋がのぞきこむ。
いちばん上に,ひもで携帯につながった小さな人形。手足といえる4つの突起を前につき出した2体,首にリボンをつけたウサギと鈴をつけたネコのコスチューム姿だった。
「これって あの…」「ストラップ… ですけど…」
「貴方が買ったの?」
「え? あ,はい」
「どっちも?」
ウサギと比べると,ネコのほうはずいぶんよごれている。
片方は友達にもらったと聞いて,また尋ねる。
「仲,いい」
「親友です」
かぶせて断言したので,君尋は,あれっとその顔を見た。侑子は淡々と続ける。
「…そう」「大事にしてるのね」
 
「飲まずに帰っちゃいましたね」
ティーカップを下げながら,君尋がつぶやいた。
「そうね」「でも また来るわ」
お茶を飲みながら,侑子が言った。
「彼女には それが必要だから」
 
「お勤めなのかな」「そのお客さん」
ひまわりが口元に指を持っていった。長い髪を左右でまとめ,腰までの縦ロールにしている。ここは私立十字学園の芝生。シートを広げて重箱をあけ,君尋とのお昼である。
「何か,気になってる?」
君尋が説明する。おとなしい感じで,わけがわからず店に来てとまどいもあるだろうが,侑子の質問にも うまく返事できない。
「でも,1回だけ」「きっぱり答えたのがあって」「それも 喰い気味に」
その肩越しに後ろから手が伸びて,手に持った小皿の品を取っていく。見上げると,静が口を動かしていた。
「鰻巻(うまき)か 次は明太い」
「作らねぇからな!」
かぶせて断固拒否。
「すごい」「そういうのを 喰い気味っていうんだね」
ひまわりが拍手。君尋は頭をかかえた。
 
縁側に腰かけてあや取りをしている侑子の後ろで,かっぽう着姿の君尋が,掃除に大奮闘しつつ,静のことをけなしている。
弁当持って来ずにじぶんにたかるのがデフォルトになってると言えば,侑子から持ってくお弁当は3つだと念押しされ,取り分が減るからと返すと,
「ふーん つまり 分けてあげるのはデフォルトな」
「違います!」かぶせて断言。
そんなやりとりをしていると……。
“ばた ばた ばた”“ばたーん”大きな音。
「ほら 客まで待てずに 喰い気味で来たわ」
 
今回も侑子はテーブルで応対。またもや,若い女性だった。
「なんで,こんな所 来たのか 分からないんだけど」
お茶を出しながら,その手元に目をやった君尋。
「あ」
両の手の平で包むように持っている携帯には,前の客と同じストラップがついていた。