トップページデータノート「XXXHOLiC」ストーリー紹介(コミック版)

第193話

《xxxHOLiC・籠》第193回
  ヤングマガジン:2009年52号:2009.11.21.土.発売
 
夜。縁側に腰をかけていた君尋が前を見ると,木の下の人影が振り向いた。
「こんばんは 四月一日君」
「こんばんは 遙さん」
 
2人は縁側に並んで腰をおろしていた。
「また今日も 静はお邪魔してるのかな」
夕飯食べて寝酒飲んで,今は寝てるか勉強でもしているのでは,と君尋。
「相変わらずだねぇ あの子も」
遙は,タバコの煙を吐いて言った。
「今はもう 遙さんのほうがずっとお若いですよ」
「あの頃のままだからね 私は」
そして,今日のお客の願いはかなえられたかと聞く。君尋が何とかと答えると,その顔を手でなでた。
「怪我もしてないようだ」
モコナにも静にも言われた,と君尋。
「本当に,最近は殆ど店の事で怪我はしてないんです」
「遙さんに色々教わりましたし」「こうやって夢の中で」
「私が教えたのは 夢で『知りたい事』を知る術(すべ)と」「店の宝物庫にあるものたちを使う幾つかの術(じゅつ)だけだよ」
「それに,どちらも元から君の中に眠っていた力があってこそだ」
君尋の目つきが変わった。
「君は,この店で働いていた間に支払っていた対価を受け取らなかった あのひとは アヤカシを視えなくしてその血に惹かれる事がないようにすると言ったのに」
「店を継ぐには必要でしたから」
遙は語った。君尋は産まれながらに強い力を持っていたが,侑子が封じていたのか使われていなかった。それでも,血にひかれて来るモノは多く,危険を避けるためにその目の力だけは消さなかったのだろう。そして,対価を受け取らなかったため,彼の中の力は解かれて今も育っている。
「この店という特異な場から出られないという事が それを更に進めているのを分かっているね?」
「強過ぎる力は 幸せだけを運んでくる訳ではないよ」
「災いを呼ぶほうがずっと多い でしたよね」「最初に貴方に教わった事です 遙さん」
「それでも か」
「それでも です」
君尋は,ふっと笑みを浮かべた。
「うちの静も頑固だが 君もかなりのものだねぇ」
「あいつのほうが酷いですよ」
遙は立ち上がった。
 
「‥‥あのひとに逢った事がある」「夢の中で」
君尋は,ハッとその顔を見た。
「君を頼むと言われた」
「逢えると信じているのなら その時,あのひとが泣くような事は してはいけないよ」
目を見開く君尋。
 
君尋が気づくと,キセルを持ったまま,縁側で柱にもたれて眠ってしまっていたのだった。
キセルに目を落として,彼は声をしぼり出した。
「侑子さん」