トップページデータノート「XXXHOLiC」ストーリー紹介(コミック版)

第176話

  ヤングマガジン:2009年17号:2009.03.23.月.発売
 
店の居間。食事が終わり,君尋から湯飲みを受け取った静がぼそっと言った。
「出せ」「九軒が作ったやつ」
君尋と一緒に食べてほしいと,ひまわりからたのまれていたと聞き,君尋は,邪気を清める力を持つ彼がいることでクッキーが手作りであるゆえの影響を少しでもなくしたい,というひまわりの思いを知った。
「味に自信がないとも言ってたな」
「んなワケあるか!」
「食べるもん作るのは十年以上ぶりだと言ってたぞ」
毎度のやりとり。彼女が言うから分けてやる,感謝感激して食べろと言う君尋だが,
「分かってる」「九軒がおまえの事を想って作ったもんだ 有り難く頂く」
そのことばに気をそがれ,クッキーの袋をじっと見る。
「おれには甘いがいける」「おまえも喰え」
静にうながされると,君尋はいっときためらってから口を開いた。
「‥‥‥‥食べるよ」
「‥‥ひまわりちゃんがおれ達の為に作ってくれたんだ」「忘れたとしても駆は覚えているだろうから」
そして……。
「‥‥おいしい」笑顔で声をあげた。
「あのひとも食べるって事で しあわせになってくれるといいな」
つぶやく君尋に,静がことばを返す。
「なるだろ」「喰いさえすりゃあな」
 
門の前。通ってひと月が経っていた。
インターホンから君尋が話しかける。
「今日のは野沢菜と梅干しです」「梅干し,おれ自分で漬けたんですよ」
「どうして,毎日来るんですか」声が返ってきた。
「すみません 迷惑ですよね」
「分かってて何故ですか」
「ただ 食べて欲しいだけです」「おれが作ったものを」「ここに置いておきますね」
答えはなかったが,とってに袋をかけ,君尋は静と立ち去った。
 
うかがうように出てくる依頼人。そして,袋を手に取ると,中を見て息をのんだ。
包みの上に,ひと枝の桜。
彼女はあのときの君尋,そしてそのことばを思い出した。
「一緒に料理して一緒に食べて それから知りたいです 貴方の事」「知って欲しいです おれの事も」