「今度は逃げるんじゃなかったのかよ」台所の入り口に立った百目鬼が言う。
「あそこで逃げたら小羽ちゃんが殴られるだろ」四月一日は朝食のおにぎりを作りつつ、答える。
「さらに他の人がなぐられたら小羽ちゃんが悲しむ。」
「おまえが殴られるのを見ても悲しまないのかよ。」
「うん。それにお前がいたし。」
その頃侑子と小羽とモコナは桜散る庭にいた。
「泊めてくれてありがとう御座います。この着物も。」侑子の着物を着た小羽が言う。目には相変わらず眼帯をしていた。
「モコナ、昨日着た時の小羽より、今の小羽の方が好きだ。」
「うん。自分でも変わった気がする。いっぱい泣いたからかな。」
「それで、あなたの願いは何なの?」侑子が言った。
「ママに、幸せになってほしい。でもまずは私が幸せになろうと思う。この力があればママを幸せに出来ると思ったけど、駄目だったから。」
「そんなことないわ。あなたはよく頑張った。」
その侑子の言葉に感極まり、少しだけ涙をにじませて、言った。
「だから、この力を対価にママのことを悪く言ってるネットとかテレビとかの人たちをやめさせて欲しいの。」