飛王の凶刃で倒れても、写身・小狼の一手は終わらなかった。場を覆い尽くさんとする魔術。その一手は、次元のバリアで守られていた飛王が構える場にも押し寄せてくる。事態を認識した飛王は逆上し、かつての手駒に容赦ない雷を放つ。小狼は風華の術を使い、写身をかばう。
再び場に静寂が訪れた後、小狼は写身に問うた。
「何故、おれを…」
魂の無い、傀儡として生まれてきた写身・小狼。右目に施した封印、つまり小狼が宿した心を失った彼は、邪な創造主の意のままに動く殺戮機械であった。そんな彼が、自ら創造主を裏切った理由を知りたかった。
「…続きが、知りたかったからだ。」
言葉の途中で途切れた、さくらの想い。日本国で消えた彼女が、たとえ「写身」という虚無な存在であったとしても、その笑顔や言の葉は後に残された者の心に深く根付いている。そう、それが同じく虚ろな存在である、彼の心にも…。
「羽根を……さくら…に…。
黒鋼さん…ファイさん…モコナ…
さくら…小狼…
ごめんな……さい
ありがと……」
小狼の右腕に抱かれながら、呟いた写身・小狼。その言葉には、偽らざる彼の想いが込められていた。
失った感情を取り戻し、二人の間に絆が生まれた瞬間。それが、彼の最期だった。右眼から現れた輝く光の結晶を遺し、彼は虚空へ儚く散っていった…。