翌日。
胸騒ぎが止まぬまま、小狼はさくらの潔斎場へと立ち入った。
水場は小狼を拒むことなく、さくらの儀式は粛々と続けられた。
今日は彼がこの世界に居ることができる、最後の日。彼がこの世界に来た理由が、目の前の少女であってほしい…。その思いは、「守りたい」という強い決意になっていた。
突然。
秩序を守りながら場を保ってきた水場に、大きな揺れが走る。
それは空間にひずみを与え、そしてその理に亀裂を入れる。
その原因は…、次元を越え、世界を切り裂いて飛王が作った「次元の裂け目」だった。 夕べ聞いたものと同じ鈴の音に惹かれるように、さくらは虚ろな瞳のまま吸い寄せられていく。
裂け目から投げ込まれる、どす黒い「欲求」の固まり。彼女が捕らわれの身となるその瞬間、小狼は「未来」を決意する。…さくらと、共にありたいという未来を。
彼は、跳んだ。さくらを、守るために…。