砂漠の、夜。包み込む冷気の中、3人は目的地へ向け歩を進めていた。
一定の時間が経てば、再び繰り返されるはずの時間。だが、『小狼』は確信していた。遺跡の中の、時間の流れを…。
辿り着いた、玖楼国の遺跡。彼らを招待するかのように、自然に開く扉。その奥には…広大な空間に豊富な水を蓄える潔斎の間があった。そこでまず目にしたのは…、流れ落ちるはずの水。それは彼らに、時が「停止」していることを告げていた。
砂漠の中にある建物の中で、なぜこれほど多くの水を保持できるのか。その理由は、強大な魔力で「場」を維持する者が居るからだ。それが玖楼国の神官の役目である。そして、現王族の中で最も強い魔力を持ち、次の神官候補であったのが、さくらであった。
ふと、モコナが尋ねた。
「いつまでそのサクラと一緒にいたの?」
『小狼』は瞳を閉じ、答えた。
「…ずっと。」
ずっと、一緒だった。初めて出会った7歳の誕生日の7日前から、いまの姿の年になるまで、ずっと。飛王の手に捕まっていたはずの「時」も、対価を払ってまで時間を巻き戻し…。
目的はひとつ、「あの日のさくらを、取り戻すために。」