切り取られた時間、それは繰り返される時間。三人は、未だこの世界へ飛王が彼らを招き入れた真意をはかりかねていた。
だが、三度繰り返されるうちに、黒鋼はある変化を見つけ出した。それは、同じ時間を繰り返しているようでも、そこに居る人の数が減っていること。聞いたはずの会話も、ところどころ欠片が抜け落ちている。
『小狼』は、ひとつ気になっていたことを尋ねた。
「祭りは…何の祭りですか?」
屈託無い笑顔で、町人は答えた。
「玖楼国のお姫様、桜姫のお誕生日を祝うお祭りだよ!」
その答えに、三人の表情が変わる。
繰り返されている時間は、さくらが7歳を迎える前日の夕暮れ。その彼女はこの瞬間、潔斎のため遺跡にいる。
その言葉を聞いて、『小狼』は思い当たるフシがあった。
と、その時。少年の母親が、あろうことか彼らの目の前で突然「熔けて」消えてしまう。繰り返される時間の中に投じられた異世界から来た三人の存在が、その流れに波紋を与えていく。
彼らがリアクションを起こす度、悲劇が起こる「切り取られた世界」。真実を掴むために、彼らが打つ手は…。