「この国に害をもたらす者は滅する。それが何者であっても」−在りし日に、セレス国の王・アシュラと交わした約束。それが、二人の絆を引き裂こうとする。
人を殺めるほどに強まる、アシュラ王の魔力。一方、自分より強い魔力を持つ者が現れれば、その者を殺す呪がかけられているファイ。アシュラ王の意図は、セレス国の民への殺戮を繰り返すうちにいつかファイの魔力を越え、呪を発動させることにあった。だが、ファイにとってアシュラ王は、絶望の底から彼を救い出したかけがえのない存在。ファイは次善の策としてアシュラ王を眠りにつかせることにした。…それが、有限のものであることを知りながらも。
真実を知った上でもなお、アシュラ王の「願い」を叶えることにためらうファイ。そこで、アシュラ王は次の手を打つ。アシュラ王が眠っていた水孔で眠りつづけるさくらを、人質に取ったのだ。さくらは、魂を失ってもまだ「生きて」いた。だが、アシュラ王の手だてに抗うことはできなかった。さくらがファイにとって「大切な存在」であることを確認した王は、ファイの心に揺さぶりをかけるがごとく、その強大な魔力を発動する。ファイが繰り出す魔力の障壁も効かぬ中、一瞬の隙を突いて攻撃に出るファイ、小狼、そして黒鋼。だが、長剣・蒼氷を手にアシュラ王の懐に飛び込もうとする黒鋼に対し、アシュラ王はその身を貫く無慈悲な一撃を放った…。