チェストーナメント優勝の対価、1度だけ次元を渡ることができる力。さくらがそれを発動しようとしたそのとき、小狼はとっさに彼女の手を掴んだ。
もう一方のさくらの手を取るのは、次元を渡る力を持った「インフィニティ」国の機械人形。そして、背後にはファイよって生み出された「セレス」国の魔法創造体。次元を越えて現れた二人の「チィ」の胸から、さくらの記憶の欠片が現れる。その時、封印されたある「呪い」が解き放たれようとしていた。
峻岳の頂にある牢獄。その中で、少年はあがいていた。出たい、この場所から…。そこに、異界からの声が響く。「願いを、叶えよう。」しかし出られるのはただ一人。彼と同じ囚われた少年か、彼自身か。彼は選んだ。そして、彼は自由を手に入れる。…彼を迎えに来た「王」の手によって。一方、もう一人の少年の身には、悲劇が訪れる。…「選択」をした、彼のまさに目の前で。
何故彼が、孤独な牢獄に留め置かれたのか。その理由は、強大な魔力にあった。自由の代償に、命を奪われたことへの「呪い」。それは、彼の力を凌ぐ者が現れたとき、その者を「殺す」ことだった。
羽根の強大な力が巻き起こす旋風が、小狼の手を振りほどく。呪いの虜となった「彼」の足下に、取り残された剣が必然のように転がり込む。
羽根がさくらの躯に取り込まれる。虚ろな瞳の「彼」は、その様子をつぶさに見ていた。彼女の瞳は、知っていた。この後、その身に起きる悲劇を…。
「ファイさん…」
彼女は呟いた。その言葉が、引き金だった。
呪いが、発動した。