トップページデータノートストーリー紹介【ツバサ−RESERVoir CHRoNiCLE−】

Chapitre.125−生命の音

 瀕死のファイ。そして、その命を救う術を問われた侑子。
 だが、侑子への依頼は対価が伴う。そして、願いの重さはすなわち、対価の重さに等しいのだ。
 そこに、都庁の異変を告げる声が。命の源、水が尽きかけているというのだ。水はさくらの羽根の力でせき止められていた。それが、羽根が持ち主の元へ戻ったため、消えてしまったのだ。
 そのことに、責任を感じる男がもう一人いた。羽根の強大な力に引き寄せられてしまい、地下で永い眠りについていた、昴流。羽根の行く先が運命だとしても、彼はさくらを水底へ引き寄せてしまい、そしてその場所を血塗られた場所にしたことにも、責任を感じていた。
 昴流は、侑子に願った。この地下の水槽を、満たすことを。
 侑子は、提言する。昴流の願いを、黒鋼の名で叶えることを。そして、黒鋼の願いを、昴流の「血の対価」をもって叶えることを。
 …昴流の血は、吸血鬼の血。治癒力が早い吸血鬼の血の力で、ファイの命を引き留める。しかし、ファイは生き残ることを望まない。黒鋼の対価、それは、彼が己の責任、つまり彼の血をファイに与え続けることによって、その生をつなぎ止めることだった。
 生を拒むファイ。黒鋼は、ファイのか細い拒否に、強い口調で言い放つ。
「そんなに死にたきゃ、俺が殺してやる。…だから、それまで生きてろ」
 ファイの胸に突きつけられた言葉。彼は、観念した。
 
 昴流の血を対価にすることを嫌う神威は、自らの血を魔術師へ差し出すことにした。そして…、黒鋼の血と混ぜられた吸血鬼の血が、ファイの唇に滴る…。