トップページデータノートストーリー紹介【ツバサ−RESERVoir CHRoNiCLE−】

Chapitre.118−愛しの吸血鬼

 薄れゆく意識の中、小狼は神威が発した言葉を反芻していた。
「血」「すばる」…。そこから結びついたのは、それは小狼に戦い方を教えてくれた師であり、さくらの羽根を懐に双子の吸血鬼を追う旅をしている青年、星史郎の姿だった。
 小狼の考えを読み取った神威もまた様相を変えた。
「やっぱりあの男を知っていたのか」
 そういうや、小狼の首をわしづかみにした後、長い爪でその喉元を斬りつけた。
 流れ出る、大量の血。それが水面を赤く彩るのには、そう時間はかからなかった。小狼の異変を感じたファイは、すかさず水の中に飛び込んだ。
 
 「昴流、起きてくれ」。
 水底で眠る、光りの塊に語りかける神威。神威の旅の同行者らしい昴流はこの世界に降り立った後眠りにつき、神威はそれに沿ってこの地に留まっていたが、二人を追う星史郎を知る存在が現れた以上、星史郎本人が二人の前に現れるのは時間の問題。神威は、眠りの一因と思われるさくらを「排除」しようと一瞥する。
 彼女に迫る、身の危険。それを本能で察した、瀕死のはずの小狼が再び身を起こす。そして、神威に襲いかかる!力量の差は明らかなはずの二人。だが、覚醒した小狼の動きは鋭く、そして圧倒的だった。
 ほどなく、ファイが水底にたどり着く。そこで彼が見たのは、全く形成が逆転した小狼と神威の姿だった。