覚醒をはじめた、もう一人の『小狼』。
そして、再び昇る、満月。
『秘めるばかりでは、何も変わらん。』
そういった阿修羅王の瞳の奥には、凛とした決意を秘めていた。
そして、再び降り立つ月の城。
そこに間髪入れず、小狼に太刀を浴びせる男の姿。
『言っただろう、今度は止めを刺すつもりで来いって』
間合いに入られ、黒鋼に防戦一方の小狼。そのとき、自らの意に反して身体が動く。
一方の阿修羅王。いつもの穏和な影はすっかりと潜める。向かい来る敵騎を一太刀でなぎ払うと、鮮やかな舞いで敵陣のしんがり、夜叉王の元へと飛び込んだ。
「私は…己の願いを叶える」
そう言い放つと、その刀を夜叉王の胸に深々と突き刺した!
致死傷になろう最期の剣。だが、それを受けた夜叉は、そのまま寄りかかる阿修羅の身体にそっと腕を回し、抱き受け止めたのだった…。