「モコナの口からの移動も、随分慣れたねぇ。」
記憶を失ったさくらの記憶の羽根を探して、次元を超え世界を渡り歩く小狼、さくら、ファイ、黒鋼、そしてモコナ。
モコナはさくらの記憶の羽根が持つ強く不思議な力に牽かれるように、4人を異なる世界へと連れて行く。が、たどり着く世界すべてに羽根があるわけではない。
今回降り立った世界には、どうやら羽根の気配はないらしい。と共に、そろって空腹感を感じた4人。その目の前にあったのは、「寿司」と大きく書かれた一軒の店であった。
「ここはまかせて!モコナがおごったげる!」
と強気なモコナ。
出された寿司は特上のもの。もと居た日本国にも同様の食べ物があった黒鋼は素直に味わって食べる。初めて食べるというさくらは緊張しながらも、その味に惹かれる。ファイは「ナマ魚はいや〜っ、くさってるにおいがするよ〜」と全く受け付けない様子。養父・藤隆とともにさまざまな世界を渡り歩いてきた小狼は、これまでに似た食べ物に出くわしたことがあり、抵抗感はないのだが、何かをしきりに気にしている。
そして。おかわりまでして十分に腹を満たした、ファイを除く3人。そこに、おそるおそる小狼が不安に感じていたことを口に出す。
「この国のお金、持ってないんですけど…。」
そこにすかさずモコナが叫ぶ。
「みんなっ!早くモコナのお口に飛び込んで!」
あっという間に口の中に吸い込まれた4人。そして、店主に一言。
「ごちそうさまでした(はぁと)」
…食い逃げでした(汗)。
《初出:マガジンワンダー/週刊少年マガジン9月11日増刊号》