小狼を先に行かせ、秘妖の部屋に留まった黒鋼とファイは、服のみならず体をも溶かす秘術の液体を全身に浴びて危機的な状況にあった。またも頭上から降りかかる液体。隙が出来たファイを、黒鋼は棒で打ちとばしてピンチをしのぐ。
二人の力量を素直に褒める秘妖。領主により幽閉された彼女は、心ならずもその意に従うしかないという。こう語った秘妖は両手を広げて術をかける。すると、秘術の液体が海嘯のごとくそびえ立った。迫り来る高波。そのとき、ファイは、手にした棒を使って宙へ跳ぶ。死に急ぐかに見えたその行為を、氷の笑みを浮かべながら冷ややかに見る秘妖。そこにすかさず、間合いに黒鋼が飛び込む!身を守ろうと突き出した秘妖の鋭い爪が、黒鋼の懐に深々と突き刺さる!
…と見えたが。黒鋼の懐には、いつかのマンガ雑誌、「マガニャン」が。作戦勝ちの黒鋼は、次に秘妖の頭上に手にした棒を振りかざした。砕け散った額の宝石。それは、領主が秘妖にかけられた秘術の石であった。
戦いに勝利した黒鋼とファイは、秘妖から、領主の居場所を聞き出すことに成功した!
一方、ファイと黒鋼に後を託し、上層階にたどり着いた小狼。そこには、彼から何度も足蹴りを受けている領主のバカ息子の姿があった。父の秘術を施した身体は、隆々とした筋肉の鎧で覆われていた。空に向けて振るった拳の勢いは、空砲のごとき勢いで小狼の身をかすめる。
秘術によって力を得たバカ息子の攻撃。素早い動きと猛き技に苦戦する小狼。利き足を捕まれ、力任せに握りつぶそうとするバカ息子。傷を負った足を庇って戦って自分に勝てる筈がない、と嘲笑する彼を、キッとにらみつける小狼。次の瞬間、バカ息子が取った足をほどき、得意の足技を懐に入れた!
そしてたどり着いた最上階。領主が棲まうその部屋で小狼が見たものは、球の中に幽閉されたさくらと春香の姿だった!
やがて、さくらの羽根を手にした諸悪の根元、領主が現る。小狼を暗行御吏かと勘ぐる領主の言葉。しかし、それは小狼の耳に届かない。再度繰り出される左足。それは首元で寸止めしたが、その瞬間羽根が輝き、たちまちのうちに小狼は吹き飛ばされてしまう。
「わしに指一本でも触れてみろ!あの二人の命は無いぞ!!」
小狼に揺さぶりをかける領主。再び構える小狼。領主は、秘術で操る村人をし向ける。卑劣な方法で小狼を追い込む領主に繰り出す、小狼の次なる手は…?