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第29話−栄光のゴール

 衝突し、炎上する小狼と龍王のフライヤー。小狼の捨て身の行動は、龍王の命を救うためのものだった。だが、レースの継続は不可能。小狼は、サクラに後事を託す。
 第三チェックポイントは、間欠泉が吹く迷路の先にあった。突如吹き出す水塊にとまどう他機を横目に、サクラは自然の声を聞く能力を駆使して一気に差を詰める。だが、再度爆発が彼らの進路を遮る。サクラを襲う発破に対し、黒鋼は身を挺して彼女をかばう。
 レースの様子を看視する知世の元に、笙悟と残から妨害の手は第三者である可能性があるとの報告を受ける。時を同じくして、センサーを元に妨害電波の発信源を突き止めた小狼。そこは、レースの主催元、ピッフルプリンセス社の本社社屋だった。
 ついにレースの先頭に立ったサクラ。そんな彼女を撃墜すべく、狙いが定まるビーム。そんな陰謀の発信源にたどり着いた小狼と龍王。妨害の犯人は、社長秘書を務める男だった。
 レースの最後は、巨大な瀑布となって流れ落ちる滝。そこから一陣の風を感じ取ったサクラは、果敢に滝の中に飛び込む。一機、猛スピードで洞窟を抜ける、サクラ操るフライングエッグ号。ゴールと栄光は、その先にあった。こうして、羽根は彼女の手に渡ることになった。
 羽根を手にするためには、レースに出場しなければならない。不正電波の発信源は潰えても、共犯者がいる…。表彰式は緊迫した空気の中で執り行われた。サクラが羽根を手にしたその時、ついに真なる敵がその姿を現す。それは「スノーホワイト」号を操っていた男だった。力ずくで羽根を手にしようとした瞬間、モコナの吸引力でなんとか取り戻す。「ジェイド国のときと同じく、その妙な生き物にしてやられるとは。」悔しそうにつぶやくその男は、まさしくジェイド国で出合った医師、カイル・ロンダートその人だった。「異なる世界には、同じ顔をした別の人間が居る。けれど、本当に別人か確かめる術はない。」そう言い残して、次元の峡間に消えていった。
 「早く、羽根をさくらちゃんの中に!」カイルの登場にも動じず言いはなった知世。彼女は、すべてを知っていた。知世は、彼女が率いる海底発掘隊が羽根を見つけた後に、夢の中で同じ姿・同じ魂の女の子、知世と出会う。彼女は知る。その羽根に、持ち主がいること、そして、それを求める旅人が、彼女の前に現れることを。だが、羽根の事実を公表してしまった彼女は、支障なくサクラに羽根を手渡す手段として、レースの優勝商品として贈ることを思いつく。レースの道中に羽根を狙う輩がいることを注意喚起すべく、予選時はわざとトラップをしかけたのだった。
 事の顛末を聞き終えた黒鋼は、夜風に当たりに外に出る。それを追う知世。黒鋼は問う。「夢の中の、知世姫はどうだ。」
 「お元気ですわ。あなたの事を話すとき、とても楽しそうでした。」柔らかな笑みを浮かべながら、知世が話す。サクラをかばったときに負傷した左腕を手に取り、「無茶をせず、早く治してください」と語りかける彼女。「…魂は、同じか…。」つぶやく黒鋼。その心は、そこにあって異世界に残してきた誰かを見るかのようだった。
 翌朝。旅立ちの時を迎える4人。その様子を、異世界から見つめる飛王と星火。「あの奇跡の行く末を、是非にも見届けねばならない」と干渉の手を向けた彼が、指し示した場所とは…?