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第10話−別離のカガミ

 思いはそれぞれに、城に攻め入った男たちは、領主の強大な「秘術のチカラ」を前に苦戦を強いられていた。
 
 黒鋼たちの助けを借り、一足先に歩を進めていたのは小狼。彼の前には、秘術の力で隆々とした身を手に入れた領主の息子、ブルガルが立ちはだかっていた。
 小狼が去り、二人になったファイと黒鋼は、アヤカシの力を持つ女、キイシムを前に苦戦を強いられていた。触れると服が、そして身が溶けていく秘術の液体。それが頭上からスコールのように降りしきる。
 『神の愛娘』サクラが訪れたことで再び戦意を取り戻した街の衆。彼らはこれまで秘術により立ち入れなかった城内に足を踏み入れられることを確かめた上で、血気盛んに攻め入ってゆく。
 
 拳圧で背後の壁をも破壊するブルガルの攻撃。「秘術の威力」を前に、防戦一方の小狼。秘術の力に慢心するブルガル。モコナをも捉え、害意を放つブルガルに、すかさず右足を放った小狼。だが、キイシムとの戦いで傷を負った足は、ブルガルの手により再び封じられる。得意技をも奪い、小狼をあざけり笑うブルガル。しかし、小狼の意志は揺るがなかった。
「かばったりしない。…どこを怪我していようが関係ない。決めたことは、やる!」
蹴りが一閃。壁に打ちのめされるブルガル。勝負は、決まった。
 
 キイシムの部屋で戦う黒鋼とファイ。領主の意のままに操られるキイシムは、気骨ある彼らに敬意を表しながらも、やむを得ず勝負を決めるとどめの一手を指そうとしていた。一方、「いち早く、この場から脱したい」ファイと黒鋼。絶体絶命の中で交わした短い言葉のやりとりのあと、「窮鼠(きゅうそ)猫を噛む」一撃をキイシムに浴びせる。宙から飛びかかるファイ。視線を彼に向けさせたその時、すかさず黒鋼は懐に飛び込んだ。秘術の力が及ばぬ間合い入り込めた代償に、鋭い爪が黒鋼の胸に突き刺さる。その身を救ったのは…、この部屋に入る前にファイが手渡し、懐に入れていた木槌の存在だった。
「…雨はキライなんだよ!」という黒鋼は、額にあった石を破壊する。それは、領主がキイシムにかけた操りの秘術であった…。
 
 その戦いを、別の場所から眺めていた領主、タンバル。次々と破られていく秘術を前に、彼はもう一つの奸計を思いつく。それは、城へと攻め入った街の衆を利用するというものであった…。
 
 サクラとチュニャンは、城からはずれた街の一角に居た。領主の力が及びきらぬその場所に、なつかしみを感じるというサクラ。その言葉の節々に、そしてその雰囲気に、サクラとは別人の、懐かしみを感じ取ったチュニャン。それは、サクラの身に魂を宿したチュニャンの母、チェニャンの姿だった。チェニャンは領主の手により命を奪われるも、その魂を城内に閉じこめられていたが故に、再び彼女の前に姿を現すことができたのだ。
 二人は、「思い出の場所」へと足を向ける。チュニャンはかつて、その場所で母が扇を用い、枯木に若芽を萌え出ずる秘術の力を目にしていた。いま、サクラの身を借りる母・チェニャンは、秘術具を一切用いずに再び枯木を萌芽させる。母に勧められ、秘術を出そうとするチュニャン。しかし、どれだけがんばっても力は発動しない。チュニャン。母は娘に、秘術の極意を思い出させる。「秘術はヒトに幸福をもたらすチカラ。決して私利私欲のために使ってはならない」。自分の考えの方向違いを指摘されたチュニャン。再び彼女が両手をかざすと、若芽は命みなぎる葉に育った。
 娘の成長を見届けたチェニャンは、秘術のカガミを託す。そして、常にチュニャンのそばにいることを告げ、彼女の魂は、天に召されていった。
 
 再び城へとかけだしていくチュニャンと、我を取り戻したサクラ。が、その道中に、ある男が立ちふさがる。…それは、領主の秘術により操られた空汰であった。
 
 
 城の最上階の部屋へたどり着いた小狼。彼がその部屋で目にするのは、秘術の源であるサクラの羽根と、囚われの身となったチュニャン、そしてサクラの姿だった。領主を前にするも、彼を取り囲んだのは、傀儡(かいらい)の兵となった街の衆。再び、小狼は難しい選択を迫られる。